2022/08/22

「おいしいものは、僕らの切り替えスイッチ」。 料理家・ぐっち夫婦のTatsuyaさんに聞く“料理円満”のヒケツとは?

たとえ気分じゃなくても、味付けの好みが違っても。新しい食体験を楽しんで

家事も二人で料理をする時も、とくにルール化しているわけではありませんが、結婚してからの5年間で自然と役割分担ができています。洗濯は、洗濯機のボタンを押すところまでは僕がやって、畳むまではSHINOさんがやってたり。恥ずかしいのですが、どうしても洗濯機の音がニガテなんですよ(笑)。ゴミ出しは僕がやってますね。結構重たいですよ、たくさん詰まったゴミ袋って。男性だと行けちゃいますけど、女性が朝出がけにバッグ持ちながらって大変だから。お互い、相手が負担になりそうなものや、得意なものは率先してやってる感じです。

料理は、うちは食べたい方が作ってますね。ちょうどアジがおいしくなってきたので、昨日は僕がアジフライとか、小アジの天ぷらを作りました。SHINOさんが食べたかったかどうかはわかりませんが(笑)。今日は撮影でSHINOさんがチーズ料理を作っていて、おいしかったですけど、僕はチーズが食べたかったわけでもなくて(笑)。だからといって、二人とも「今日は〇〇の気分じゃなかった」みたいなことは言いませんね。よけいなこと言っちゃうと、作るの嫌になっちゃいますから。お互い料理するから、作り手の気持ちはよくわかる。

味付けも、薄味だったり濃い味だったり、生まれた地方によって調味料が違ったりもしますよね。その辺はもう楽しんじゃった方がいいと思うんですよ。知らない味を知ることができてラッキーみたいな。そうやって、円と円が重なるみたいにそれぞれが経験してきた味があわさって、二人の新しいおいしさみたいなものが生まれるのも楽しいですよ。

男性の料理参加は、花形パートでやる気をUP!

先ほど一緒に料理をしてみるといいんじゃないかという話をしましたが、自分たちの料理教室だったりいろんなアンケートだったりで、「どうやって夫に参加してもらえばいいかわからない」という声をよく聞きます。

当然みなさん、「“一緒に”料理する」っていう前提でお話しされてるんだけど、男性をお手伝いとしてジョインさせている方が多い印象があって。なので、野菜を切るだとか、「あなたでもできそうだよね」っていうところは任せるんですけど、そこじゃなくて、フライパンを振るとか、肉を焼くとか、その料理の中でメインになる花形のパートをやらせたほうが男性はどんどん参加するようになるんじゃないかと僕は思っていて。やっぱり子どもなんですよ、男は。「玉ねぎ切って」とか、イヤイヤやって指切っちゃったりとかするんですよ(笑)。気分がよくなるような派手なところからやらせて、やる気が出てきて「これ作ってみたい」となったら、今度は一緒に買い物に行くことが二人の楽しみになるかもしれないですよね。

一緒に作らなくても。「おいしいね」のひと言が二人の毎日を幸せに

参加する側の男性の心構えとしては、まず料理が得意だったり趣味だったりする男性はドヤドヤしないこと! たまに好きなものを作るのと、家族の健康のために栄養のバランスを考えながら毎日料理するのとではぜんぜん違います。だから一緒に作る時は、ドヤドヤしない。そもそもどうしても料理に興味が持てないという男性は、「一緒に作る」だけが料理への参加ではなくて、素直に「おいしいね」って笑顔で食べれば、それだけでいいんじゃないかな。得意不得意はありますから、一緒に料理したい気持ちはあっても、やっぱりできない人もいる。やりたくない人も、もちろんいて当然です。そういう人たちは、無理に作らなくても「ありがとう」「おいしいね」「ごちそうさま」ってたった3つのこの言葉を伝えることも、料理を一緒に楽しんでいることになるんじゃないかなって。

料理って、“誰かのため”なんですよね。一人で作ったとしても、自分のために作ってるわけで。そんな「〇〇のために」っていう思いだったり、食べる人からすれば作ってくれたことへの感謝だったり、もちろん、おいしいものを食べるってことも含めて、料理には人を笑顔にしてくれるパワーがある。なんか、無条件で幸せな気持ちになれますよね。自分たちらしいスタイルで料理を楽しむ夫婦が、もっと増えてくれたらいいなと思います。

PROFILE:Tatsuya(ぐっち夫婦)

料理家。飲食店で独学で料理を学ぶ。ごはんのすすむ料理や一品もの、お酒に合うおつまみなどを得意とし、料理を口に入れた瞬間のおいしさを大切にしている。30か国以上訪れた経験をいかし、世界の料理を家庭料理で再現したりと、手軽ながらも、本格的な味づくりにも定評がある。料理家活動のほか、企業のマーケティングや新規事業立ち上げ等のコンサル業務に携わる。SNSセミナーや、食系デジタル戦略講演を行うなど個人でも多方面で活躍。